病気による肩こりと一般的な肩こりの原因とは

人生で一度は経験するであろう肩こり。

そのほとんどが病気が原因ではない肩こりですが、中には病気が隠れている場合もあるので注意が必要です。

たかが肩こり、されど肩こり。

今回は病気が原因となっている「症候性肩こり」と、原因がハッキリしない「本態性肩こり」についてみていきましょう。

・階段を上るなど運動したときに肩が痛む
・手がしびれたり力が入らない
・動かしていないのに痛む
・症状がひどくなっている

このような症状がある場合は、まずは病院を受診してください。

本態性肩こりの原因について

肩こりといっても症状を感じる場所は人それぞれ違います。

肩こりとは、項頸部から僧帽筋エリアの諸筋に生じる主観的に詰まったような、こわばった感じや不快感・こり感・重苦しさや痛みにいたる症候の総称である。

引用元:肩こり Wikipedia

肩こりの原因として姿勢の悪さがあげられますが、なぜ姿勢が悪いと肩がこるのでしょう?

ここで、頭と腕の重さを確認してみましょう。

頭と腕の重さ

実は、頭と腕って結構重いんです。

その重い頭や腕を、首や肩で支えているわけです。

悪い姿勢が続くとなぜ肩がこるのか、イメージできたかと思います。

解剖学的な理想の姿勢とは

現代は姿勢が崩れやすい環境がとても多く存在します。

頭や骨盤など体節(身体の節構造の一つ一つ)の並びのことをアライメントというのですが、このアライメントが崩れることで肩こりなどの症状が起こりやすくなります。

では、解剖学的な理想の姿勢とは一体どういう姿勢なのでしょうか?

それは立っている状態で背面と横から見て、アライメントがキレイに整列している状態のこと。

ポイントとなる部分にしっかり重心線が通っているかどうかで確認できます。

背面の重心線

側面の重心線

これが解剖学的に理想とされる姿勢です。

このようなアライメントだと姿勢を保持するための筋肉に無理に負担をかけず、コリが発生しにくいとされています。

大切なのは、身体全体に目を向けることです。

肩こりだからといって、肩だけに目を向けていては根本的な改善にはつながりません。

デスクワーク時の悪い姿勢とは

悪い姿勢とは猫背などで理想的なアライメントが崩れてしまっている状態です。

特に座っている姿勢は崩れやすいですよね。

よくある姿勢がこんな感じ

このような座り方をしている人が多いのではないでしょうか。

パソコン作業時の良い姿勢とは

ではパソコン作業時で身体に負担をかけにくい姿勢とは、どのような姿勢なのでしょうか。

デスクワークの良い姿勢

ノート作業時の良い姿勢

ソファでの良い姿勢

理学療法士の澤渡先生(@t_sawatari)の画像をお借りしました。

「椅子に浅く座りましょう」と言われたりしますが、実はちゃんと背もたれを使ってあげた方が身体への負担が少なく作業ができます。

とはいえ、やはり長時間のパソコン作業は疲れますので、こまめに立ち上がって少し身体を動かすようにしましょう。

本態性肩こりは筋肉のバランスの崩れが原因

本態性肩こりの多くは日常生活の癖・座り方・立ち方・怪我の有無などによって筋肉のバランスが崩れ姿勢が悪くなり症状が起こります。

理想的な姿勢だと筋肉はバランスよく活動して姿勢を保ちますが、悪い姿勢だとそのバランスが崩れどこかに不快な症状が現れます。

また、その不快な症状から身体をかばうためにさらに悪い姿勢になってしまい、肩こりがさらに悪化する悪循環も起こってしまいます。

精神的緊張によるもの

緊張状態が続くと、筋肉はこわばります。

意外と多いのが歯を食いしばる噛み癖がある人です。

噛み癖があるとアゴの筋肉だけでなく、首の前側の筋肉(胸鎖乳突筋)も張ってきてしまいます。

食いしばるまではいかなくても、歯と歯が閉じてしまっている状態でも同じです。

特に仕事などで緊張状態が長く続いている人に、アゴの筋肉や胸鎖乳突筋が張っている人が多くみられます。

通常、リラックスした状態だと歯と歯はくっついていません。

また、左右の噛み合わせのバランスの偏りによって肩こりや腰痛の原因になることもあるそうです。

参考元:長坂歯科 頭痛・肩こり・腰痛

僕自身も、パソコンで作業をしているときなど集中しているときに、上下の歯を接触する癖があることに気づきました。

首の前側が張っているのは、知らないうちに食いしばっていたからなんですね。

注意が必要な症候生肩こりとは

多くの肩こりは悪い姿勢や筋肉の過緊張による本態性肩こりですが、気をつけなければいけない肩こりというものもあります。

病気が原因となっている症候性肩こりです。

病院へ行くべき症状

このようなときは鍼灸やマッサージを受ける前に、まずは病院でみてもらいましょう。

では、症候性肩こりは主にどのようなものがあるのでしょうか。

椎間板ヘルニア

ヘルニアというのは、組織や臓器が本来あるべき場所からはみ出した状態のことをいいます。

椎間板ヘルニアというのはその名の通り、背骨の骨と骨の間にある椎間板が本来あるべき場所から、はみ出してしまっている状態です。

背骨(脊椎)は1つの骨で構成されているのではなく、椎骨といってブロック状の骨が1つずつ連なって構成されています。椎骨の数は24個(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)、これに5個の仙椎がくっついてできた仙骨、3〜5個の尾椎がくっついてできた尾骨で構成されています。

1つずつが連なってできているため、骨と骨が直にくっついていると衝撃を吸収したり動いたりしたときに不都合が生じてしまいます。

しかし身体というのはうまくできているもので、骨と骨の間にクッションの役割をする軟骨が存在します。

それが椎間板です。

椎間板ヘルニアは椎間板がはみ出している場所によって症状が出るところが変わりますが、骨の中を通っている神経が圧迫されて主に手が痛くなったり、しびれが出たり、力が入りにくいなどの症状が現れます。

保存的療法(手術をしない治療法)が多いのですが、症状が強い場合は手術をする場合もあります。

頸椎症

椎間板ヘルニアでは骨と骨の間にあるクッション(椎間板)がはみ出して、神経を圧迫していました。

椎間板ヘルニアと似たもので、頚椎症というものがあります。

椎間板ヘルニアとの違いは、頚椎症は椎間板のはみ出しではなく骨や椎間板が加齢により変形してしまい神経を圧迫する病気です。

こちらも基本的には保存的療法ですが、生活に支障が出るくらい症状が強い場合は手術をすることがあります。

五十肩

一般的によく使われている四十肩・五十肩というのは、正確には肩関節周囲炎といいます。

肩の前の方だったり後ろの方だったり、腕が痛くなることもあります。

肩関節周囲炎は主に炎症期・拘縮期・回復期の3つの期間があり、痛みは徐々に無くなっていきますが、そのまま放置すると関節が硬くなってしまい日常生活でも支障をきたすことがあります。

原因はハッキリとわかっていませんが、デスクワークなどで肩の関節をあまり動かさない人に多い印象です。

もしもなってしまった場合は放置せず、しっかりと治療を受けましょう。

運動療法と合わせて鍼灸治療も行うと効果的です。

胸郭出口症候群

胸郭出口というのは、首から胸の間にある隙間のことです。

この隙間には神経や血管が通っているのですが、なで肩や筋肉によって圧迫されるとしびれが出たり力が入りにくくなったりといった症状が現れます。

なぜ圧迫されているのか、その原因によって治療が変わってきます。

  • 運動療法
  • 鍼灸治療
  • マッサージ

このような治療方法があります。

また、まれに頚肋(けいろく)といって首の下の方の骨が肋骨のように少し出ている人がいます。

大きさについては個人差があり症状がない場合もありますが、しびれなどの症状があれば胸郭出口症候群の原因の一つといわれています。

内臓からの関連痛

本態性肩こりも含めてここまで紹介してきたものは主に筋肉や骨による症状でしたが、内臓からも関連痛として肩に痛みが現れることがあります。

関連痛と放散痛

内臓から肩への関連痛として有名なのは

  • 狭心症や心筋梗塞(左肩が痛む)
  • 胆石(右肩が痛む)
  • 肺がんのパンコースト症候群

パンコースト症候群というのは、肺の先っぽ(肺尖部)にできる腫瘍が神経を圧迫することによって腕や肩に痛みが現れたり、むくみが出たりすることをいいます。

このような内臓の関連痛の場合、マッサージでは良くなりません。

大抵の場合は筋肉や骨が原因となるのですが、このような肩こりも存在するので頭に入れておきましょう。

肩こりの原因は様々

今まで見てきた通り、肩こりといっても様々な原因があります。

本態性肩こりも見逃せないのですが、特に注意したいのが症候性肩こりです。

ヘルニアや胸郭出口など骨や筋肉が原因となる症候性肩こりは命に関わるような緊急性はありませんが、狭心症など内臓からの関連痛で起こる命に関わるような症候性肩こりがあることは覚えておく必要があります。

ほとんどの場合は鍼灸やマッサージなどで血流の循環がよくなれば改善が期待できる本態性肩こりです。

しかし、思わぬ病気が潜んでいるかもしれないということを忘れないでください。

おわりに

・階段を上るなど運動したときに肩が痛む
・手がしびれたり力が入らない
・動かしていないのに痛む
・症状がひどくなっている

 

このような症状がある場合は、まずは病院を受診してください。

今回紹介したこと以外でも、肩こりが起こる原因は様々あります。

普通とはちょっと違うかも、といったことがあればすぐにお近くの治療院や病院で相談してみてください。

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