OPTモデルのトレーニングの組み立て方

新型コロナウイルスの影響もあり、世間では健康に関心が集まっています。

ウイルスに負けず丈夫な身体を作るためには食事、運動、睡眠が大切になります。

今回はその中でも運動のお話。

いざ運動を始めてみようと思っても、どのようにメニューを組み立てるのかわからないと効率よく身体を鍛えることができません。

かえって、闇雲にトレーニングをしてしまうとケガのリスクを高めてしまいます。

では、どのようにメニューを組み立てればいいのでしょうか?

丈夫な身体作りにはトレーニングは不可欠です。ボディメイクのためだけではなく、健康を増進させるためにもトレーニングを生活の中に取り入れてみましょう。

効率よく身体を鍛える原理・原則

トレーニングには原理と原則があります。

原理と原則はトレーニングを行う上で知っておくべき道標のようなもの。

原理と原則にしたがって上手にトレーニングを行えば、短時間の運動でもしっかりと効果が出せます。

トレーニングの原理・原則

トレーニングにおける原理とは身体に起こる反応のことで、原則とは効果をしっかり出すためのルールのようなものです。

過負荷の原理とは負荷の値のこと

その名の通り、身体を成長させるためにはある程度つらいと感じるレベルの負荷が必要になります。

楽にできる負荷のままだと現状維持はできますが、身体を成長させることはできません。

「いつもはエスカレーターに乗ってしまうけど、階段を登るようにする」

これも過負荷の原理にしたがった行動です。

どのレベルを目指すのかによって負荷の値は変化しますが、激しい運動をしなければいけないわけではありません。

今の能力以上を目指すのであれば、いつもより少し負荷を高めてみましょう。

上記のように、階段を登るようにするというちょっとしたことでもOKです。

可逆性の原理とは元に戻ってしまうこと

トレーニングをやめ、元のレベルの身体に戻ってしまうことを可逆性の原理と言います。

頑張ってトレーニングをしてもやめてしまえば、残念ながら身体は元に戻ってしまいます。

とはいえ、またトレーニングを再開するとマッスルメモリーによって筋肉はつきやすいとされています。

今までしてきたトレーニングが全く無駄になる、なんてことはありませんのでやる前から諦めずにトレーニングを再開しましょう。

特異性の原理とは鍛え方次第で機能が変わること

トレーニングの種類によって鍛えられる機能が変わります。

例えば、ジョギングならジョギングに適した機能が、スクワットならスクワットに適した機能が発達していきます。

パワーをあげたいのにジョギングしていても、パワーは上がりませんよね。

力学的にも神経的にも代謝的にも、そのトレーニングに合わせて機能が成長していきます。

自分の目的に合わせたトレーニングを選択することが大切です。

全面性の原則とは全身鍛えようということ

色々な種類のトレーニングをして身体を全体的に鍛えてあげましょう、というのが全面性の原則です。

上半身ばかり筋トレする、ランニングばかりするといった偏ったトレーニングでは、ケガのリスクにも関わってきます。

プロスポーツ選手も自分の専門のスポーツだけではなく、オフシーズンには違うスポーツを行ったりします。

健康維持目的だとしてもウォーキングだけではなく、たまには筋トレを入れてみたりして、トレーニングに変化をつけてみましょう。

違ったトレーニングをするのも結構楽しいですよ。

漸進性の原則とは徐々に負荷を上げること

今の能力以上を目指すのであれば負荷を上げなければいけません。

では、負荷を一気に上げれば良いのでしょうか?

答えはNOです。

当然ながらケガのリスクにもなりますし、一気に負荷を上げるのは危険です。

そのトレーニングに慣れてきたら少しだけ重くしてみたり少しだけ長くしてみたり、回数を少し増やしてみたり徐々に負荷を上げていくことが大切です。

反復性の原則とは継続すること

トレーニングを1回行っただけで身体が変われば良いのですが、残念ながら変わりません。

継続し、負荷を上げつつトレーニングを行うことで身体は成長していきます。

継続は力なりです。

これが一番難しいかもしれませんね。

個別性の原則とは人それぞれ違うこと

トレーニングも、その人の目的に合わせたプログラムが大切です。

性別や年齢、性格や環境など人それぞれ違います。

「このトレーニングが良い」という情報をキャッチしたとしても、その人には良かったかもしれませんが自分に合うかどうかは分かりません。

あくまでも一つの例として、参考程度にしておくのが良いでしょう。

サプリメントなどでも同じことがいえます。

意識性の原則とは集中すること

そのトレーニングは何の目的で行うのか、どこの筋肉に効果があるのかなど、そのトレーニングの意味を理解することが大切です。

何も意識せず適当にトレーニングを行ったとしても効果は薄いです。

効率よく身体を成長させるためにも、トレーニングの目的を理解してから行うようにしましょう。

身体がストレス適応するための3つの期間

ストレスというと悪いイメージばかり浮かんでしまいますが、成長するためにはストレスが必要となります。

トレーニングも身体にとってはストレスです。

人間の身体には、そのストレスに適応する能力が備わっています。

そのようなストレスに適応することを汎適応症候群といいます。

汎適応症候群はカナダの生理学者、ハンス・セリエさんが唱えた学説。

汎適応症候群によると、ストレス反応には3つの期間があるとされています。

警告反応期

ストレス反応の第一期で、ストレスへの初期の防衛反応です。

この時期はさらにショック相と反ショック相に分けられます。

ストレスが与えられると最初にショック相に入り、体温や血圧の低下など抵抗力が弱くなります。

その後は反ショック相に移行し、抵抗力は高くなります。

トレーニングをすると筋肉痛が起こることがありますが、筋肉痛はまさに警告反応期です。

抵抗期

ストレス反応の第二期となるのが抵抗期です。

与えられたストレスに適応しようと身体と心の活動が活発になりますが、まだストレスに対して適応しようとしている段階です。

「回復した」という感覚になりますが、この時期にハードなトレーニングを重ねると第三期の疲弊期へと移行してしまいます。

トレーニングでいうと超回復という機能が向上している期間になります。

疲弊期

ストレス反応の第三期が疲弊期です。

疲弊期まできてしまうとオーバーワークとなります。

十分にストレスに対して適応できていない段階でさらにストレスを重ねることにより、うつ症状や胃潰瘍、疲労骨折などの身体症状を引き起こしてしまいます。

疲弊期にならないよう、しっかり休息を取ることが大切です。

ストレスに適応する

トレーニングによる身体の成長は警告反応期と抵抗期の繰り返しにより起こります。

トレーニングにより与えられた負荷(ストレス)に適応していくということは、身体の成長を表します。

汎適応症候群

トレーニングのやり方は6段階(OPTモデル)

トレーニングの原理と原則、身体のストレス適応についてはわかったけれど、実際にどうすれば良いのか。

ここからはOPTモデルという考え方から、具体的にどのようにプログラムを組んでいったら良いか、みていきましょう。

OPTモデル

フェーズ0:コレクティブエクササイズ

まずはトレーニングを始める前に、筋肉のアンバランスや姿勢不良などをストレッチなどで整えていきましょう。

高いパフォーマンスを発揮するために必要なほか、ケガのリスクを減らすためにも必要な行程です。

フェーズ1:スタビライゼーションステージ

スタビライゼーションステージ(安定性持久力)はOPTモデルの中でも土台となる部分です。

どのスポーツ、どの動作においてもずっと静止して行う運動はありません。

人間は常に動きのある中で自分の身体をコントロールしています。

片足立ちのような不安定な環境においても上手に身体を使い、力を発揮できるようにするためには安定性筋力と姿勢のコントロールが必要になります。

フェーズ1では、主に体幹の筋肉のファンクショナルストレングス、神経筋効率の向上を目的としています。

ファンクショナルストレングスとは、1つの筋肉が加速・減速・複合動作に対して効果的に出力できる能力のことをいいます。要するに、様々な動きにおいてもしっかり働ける筋肉のこと。

神経筋効率とは、ファンクショナルストレングスを発揮できるよう主動筋・拮抗筋・協動筋・固定筋をうまく動員する能力のことで、中枢神経系が関わっています。要するに、身体全体を上手く働かせることができる能力のこと。

力をつけていく前に自分の身体を上手に扱えるように神経系を鍛えましょう、といったところでしょうか。

具体的には片足立ちのまま、もう片方の足を前後左右に動かしたり、プランクなどもスタビライゼーショントレーニングとなります。

スタビライゼーショントレーニング

フェーズ2・3・4:ストレングスステージ

フェーズ2からはいよいよ、筋力を向上させていくステージに入ります。

フェーズ2からフェーズ4まではストレングスステージとなるのですが、これは体幹の筋力の向上、高重量に対抗するための筋・腱・関節などの荷重閾値を上げることが目的となります。

  • フェーズ2・・筋持久力
  • フェーズ3・・筋肥大
  • フェーズ4・・最大筋力

このようなことを目的としたトレーニングを行います。

スクワットなどの一般的な種目に加えランジをするなど、より動作に近い動きをトレーニングに取り入れることによって筋持久力を向上させたり、高強度なトレーニングにより筋肉の細胞レベル・神経システムを成長させていきます。

安定した環境で、主動筋を強化する一般的な筋トレのイメージがストレングスステージです。

ストレングストレーニング

フェース5・6:パワーステージ

パワーステージでは、それまでのステージで向上させた能力をさらに爆発的に発揮できるようトレーニングをしていきます。

パワーとは、力×速度です。

パワーステージでのトレーニングは、スタビライゼーションステージとストレングスステージでのトレーニングが非常に重要になってきます。

身体の安定性がなく、上手にコントロールできなければケガにつながりますし、最大筋力が育っていなければ強い力を発揮することができません。

ストレングスステージと違い、単一な動き(ベンチプレス、スクワットなど)ではなく、複合的な動き(スクワットジャンプ、オリンピックリフティングなど)でトレーニングを行います。

このことからも、十分な安定性と筋力が必要なことがわかりますね。

パワートレーニング

トレーニングはどのくらいやれば良いか

トレーニングの反復回数やセット数、強度などの値のことをトレーニング変数といいます。

ここではそれぞれのステージで、具体的にどのような変数でトレーニングを行えば良いか、みていきたいと思います。

トレーニング変数

  • レップ数・・反復回数
  • 強度・・1RM=100%(1RMとは最大挙上重量です)
  • 量・・レップ数×セット数

上記のレップ数よりも楽に反復できるようになったら負荷を強くしましょう。

トレーニングの頻度

1回のトレーニング時間は60分〜90分を目安に切り上げましょう。

だらだらやるのではなく、短時間で集中して終わらせることが大切です。

初めは軽い負荷から

運動が久しぶりという場合でも、最初は軽めの負荷から行うようにしましょう。

そのトレーニングの目的を身体に覚え込ませることが大切です。

ただ闇雲にトレーニングを行うのではなく、原理原則やOPTモデルなどを参考にしながらトレーニングを行うことで、より効率的に身体を成長させることができます。

また、休息も十分に取ることが大切です。

汎適応症候群のところでも説明した通り、トレーニングをやりすぎても身体は成長していきません。

休むこともトレーニングです。

おわりに

今回は、どのようにトレーニングを組み立てていけば良いか、その考え方についてみてきました。

トレーニングの参考になれば幸いです。

今回はNASM-PES(アメリカのスポーツトレーナー資格)から、OPTモデル・変数についてご紹介しました。

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