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プラセボという言葉をご存知でしょうか?
プラセボとは効き目のない薬を服用したはずなのに、患者さんが「これは効きめがあるはずだ」と思い込むことで症状が改善することを意味する薬学用語です。
ちなみにプラセボ効果とは反対の反応として、ノセボ効果というものがあります。ノセボ効果は、なにも効果がないはずの薬なのに望まない副作用が起こることを意味します。
プラセボには薬と同じか、もしくはそれ以上の効果があるともいわれていて、人間の思い込む力はバカにできません。
今回は痛みに対してプラセボが働くときどのようなことが起こっているのか、どのようなことに注意すべきなのか、ちょっとみていきたいと思います。
プラセボが働くときの脳の様子
さて、プラセボが働くとき脳はどのような反応をしているのでしょうか。
- 「これは効きめがあるはずだ」という期待から前頭前野が活動する
- 痛みに関連する感覚野や視床といった脳の領域の活動を抑える
- 内因性オピオイドに関わるPAG-RVM系を活性化させる
- 下行性疼痛抑制系により鎮痛が起こる
なんのこっちゃという感じですね。
少し詳しくみていきましょう。
人間たらしめる前頭前野
おでこの後あたりに位置するのが前頭前野という領域。
前頭前野は人間がほかの動物よりも発達している部分で、高度な精神活動を司る部分です。
なにかを考えたり物事を判断したり、感情や行動をコントロールしたりする人間を人間たらしめているのは前頭前野が発達しているからです。
「これは効きめがあるはずだ」という期待は、すなわち前頭前野の活動です。
この前頭前野という部分の活動が鎮痛機構を働かせるキーとなります。
体に備わっている鎮痛機構
前頭前野の活動は痛みを受けとる感覚野などの活動を抑えるだけでなく、痛みを感じにくくする体に備わっている鎮痛機構(下行性疼痛抑制系)のスイッチを入れる役割もあります。
その下行性疼痛抑制系に関わるのがPAG-RVM系から放出される内因性オピオイドというものです。
PAG-RVM系とは中脳水道周囲灰白質と吻側延髄腹内側部という脳の領域のこと。
内因性オピオイドとは、痛みなどで体が「これは危険だぞ」と感知したときに放出される物質で、エンドルフィンやエンケファリンといったものがあります。
長距離のランニングでだんだん気持ちよく感じる、いわゆるランナーズハイのイメージです。
なんと、「これは効きめがあるはずだ」という期待はこのような鎮痛機構まで作動させてしまうようです。
思い込みの力ってすごい。
プラセボの効果は期待によるもの
ここまでの内容をまとめてみると、「これは効きめがあるはずだ」という期待によって体内で痛みを抑える物質が放出されて痛みが和らぐということです。
この期待は投げかけられる言葉の内容だったり社会的信用度であったり、誰が説明するか、ブランドなどで高まります。
さらにプラセボの効果が発揮しやすい人の性質として、楽観的性格や協調性の高さなどがあげられます。
セラピストの身として「ときには力強く断定するような説明も権威づけとして必要なのかもしれないな」なんて思いました。
プラセボで注意したいこと
プラセボは「これは効きめがあるはずだ」という期待から起こるものだとわかりました。
ただ、だからといって間違っていたり根拠に乏しいものを信頼しても良いというわけではありません。
特に健康食品や健康サービスなどには注意したいところ。
例えば強めのマッサージなど、長期の利用によって体にとって有害なものもあります。
そのようなものをプラセボ効果があるからといって利用することは控えた方がいいでしょう。
プラセボを最大限利用するには、根拠のあるものを信じ、期待することです。
正論は面白みがなく避けられる傾向にある世の中ですが、キャッチーでわかりやすく目を引くものには注意したいところです。
おわりに
今回はプラセボのメカニズムについてみてきました。
間違っていたり根拠のないものをすぐに信じてしまうのは良くないですが、なんでもかんでも疑り深いのも考えものです。
自分でもいろいろと調べてみた上で「これなら大丈夫だ」と信用することが大切なのかもしれませんね。
鍼灸やマッサージ(あん摩マッサージ指圧師やその他医療資格者による施術)もプラセボによるところが大きいといわれますが、鎮痛や抑うつ症状、自律神経への作用など良い研究報告も存在します。どんどん良い報告が出てくると嬉しいですね。