ほとんどの方が悩まされる肩こりと腰痛。
平成28年度の厚生労働省による調査では
有訴者率の上位5症状
「女性」
- 肩こり
- 腰痛
- 手足の関節が痛む
- 身体がだるい
- 頭痛
「男性」
- 腰痛
- 肩こり
- せきやたんが出る
- 鼻がつまる・鼻汁が出る
- 手足の関節が痛む
このように女性も男性も有訴者率の1位2位となっています。
腰は上半身の重さを支える部分。
足や股関節、骨盤や背骨の影響も受ける、まさに「身体の要」となる部分です。
また、思わぬ病気が隠れていたり精神的な要因から腰痛が起こることもあります。
このように様々な原因が考えられるのが腰痛です。
では、具体的にどのような原因が考えらえるのでしょうか?
今回は腰痛の原因についてみていきましょう。
目次
検査しても特に何もない腰痛の原因とは
「病院で検査したけど原因がわからなかった」
腰痛を抱える多くの人が、このような経験をしているのではないでしょうか。
原因がハッキリとわからない腰痛のことを、非特異的腰痛といいます。
ほとんどの腰痛は、この非特異的腰痛とよばれるもの。
検査ではわからないですが、非特異的腰痛も様々な原因が考えられます。
そして、腰痛といっても腰だけに原因があるわけではありません。
日常生活での姿勢
やはり姿勢は腰痛とは切り離せない関係にあります。
というのも動作や姿勢によって、腰にはかなり負担がかかるからです。
この表からもわかるように、デスクワークなどでの前かがみの姿勢や膝を曲げずに重いものを持ち上げる動作などは腰にかなり負担をかけていることがわかります。
最もNGなのは持続的に腰に負担のかかるようなことをすることです。
腰椎椎間板ヘルニアの原因にもなりますし、なにより筋肉に負担をかけることになります。
では、腰の負担が少ない理想の姿勢とは一体どういう姿勢でしょうか。
それは背面や横から見たときにアライメントがキレイに整列している姿勢が理想とされています。
アライメントとは頭部や骨盤など体節(身体の節構造の一つ一つ)の並びのことです。
また、アライメントが整っていると重心線(重心を通る垂直線)は次の画像のようになります。
このように重心線が正しい位置を通る姿勢が、解剖学的に理想の姿勢とされています。
とはいえ現実的にこの姿勢を維持するのは難しいので、長時間同じ姿勢を続けないことが大切です。
身体の使い方
長時間の同じ姿勢でなくても腰に負担のかかるような動作を繰り返していれば、腰痛の原因になる可能性があります。
例えば、前かがみで荷物を持つという動作を繰り返していたら腰が痛くなったりしますよね。
普段から骨盤が後傾するような姿勢を続けると太もも裏の筋肉(ハムストリングス)が短縮傾向(硬くなる)になり、その状態でかがんだりすると腰に負担をかけることになります。
また、背中の筋肉が硬くなり背骨(胸椎)の動きが悪くなると前かがみになったときに力を分散することができず、腰に負担がかかってしまいます。
このように腰とは離れている場所も原因になったりします。
荷物を持つ作業が多い人は膝を曲げてから前かがみにならないように持ち上げたり、太もも裏の筋肉をストレッチしたり、普段の身体の使い方を見直してみましょう。
病気ではない内臓の不調
内臓の疲れも腰痛に関係する場合も考えられます。
内臓から筋肉などの外側に起こる反射機構のことを内臓体性反射といい、内臓に不調があると自律神経を介して筋肉を緊張状態にしてしまうこともあります。
内臓の不調すべてが腰痛に繋がるわけではありませんが、内臓と筋肉には関係性がありますので飲み会続きで胃腸に負担をかけていると腰痛の原因にもなることを覚えておきましょう。
精神的な問題
精神面は、内臓とも関わりがあります。
緊張状態が続くと交感神経が活発になり血圧が高くなったり、胃腸の機能が低下したり様々な不調が起こります。
先ほどの内臓の不調でも説明した通り、内臓は外側にある筋肉にも関係があるため精神的な問題から腰痛を引き起こす可能性もあります。
緊張状態では筋肉も縮こまってしまい血流が悪くなり、それが腰痛の原因となることも。
精神的ストレスが腰痛の原因になることも意外と多くみられます。
筋力の問題
体幹の筋力が低下すると腰痛に繋がるという話は耳にしたことがあるかと思います。
これは、体幹の筋肉がコルセットのような役割を担っているからです。
身体を支えているのは骨だけではありません。
むしろ、筋肉が大きく関わっています。
その筋肉が弱くなってしまうと骨への負担が増してしまい、腰痛の原因となってしまうのです。
身体の動きがあるときに体幹の筋力がしっかりしていると、腹圧がコルセットのような働きをして腰への負担を軽くすることができます。
まずは病院へ行くべき腰痛とは
腰痛のほとんどは原因がハッキリわからない非特異的腰痛ですが、当然ながら検査で原因がわかる腰痛もあります。
そのような原因がハッキリわかる腰痛のことを特異的腰痛といい、注意が必要な場合があります。
このような症状があっても重篤な疾患が見つかる方は少ないそうですが、まずは検査を受けた方が良いでしょう。
では、特異的腰痛にはどのようなものがあるのでしょうか。
椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間には椎間板というクッションの役割をする軟骨があるのですが、その椎間板が本来あるべきところからはみ出てしまうのが椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアだからといって、すべての人に腰痛が出るかといったら出ない場合もあります。
しかし、はみ出てしまう程度や方向が悪いと神経を圧迫してしまい腰痛に繋がったり足が痺れたり、重度だと排泄がうまくできない膀胱直腸障害が起こる可能性も。
基本的には保存的療法となりますが、症状が重い場合は手術が適応となります。
脊柱管狭窄症
加齢などによりクッションの役割をしている椎間板が変形し、神経が通っている部分が狭くなって神経が圧迫されてしまうことを脊柱管狭窄症といいます。
安静時の腰痛は少ないのですが長距離を歩くとしびれや痛みが出現し、座ったり前かがみになると症状が軽減する間欠性跛行というものが特徴です。
膀胱直腸障害や日常生活に支障が出るような場合は手術をすることがあります。
腰椎変性すべり症
腰椎変性すべり症では、背骨の椎体と呼ばれる部分が正常な位置からずれてしまい、神経が通っている脊柱管が狭くなり神経を圧迫する疾患です。
主な症状は脊柱管狭窄症と同じで、中高年以降の女性に多いとされています。
分離すべり症
変性すべり症とは違い、若い人に多いのが分離すべり症です。
スポーツによる腰のひねりやジャンプにより背骨と背骨の連結が分離してしまい、腰痛だけでなくお尻や太ももの痛みの原因となります。
ほとんどは日常生活に支障がないので手術はしないのですが、支障が出るようであれば手術をする場合もあります。
脊椎炎
細菌によって背骨に炎症が起こるのが、脊椎炎です。
高齢者に多く、特に免疫能が低下しているときに起こるとされています。
安静にしていても痛みがあり、発熱がある場合は脊椎炎の可能性があります。
内臓の病気による腰痛
姿勢と関係なく、突発的な腰痛の場合は内臓疾患が隠れている可能性があります。
- 腹部大動脈瘤
- 腎盂腎炎
- 尿路結石
- がんの転移
過度に心配する必要はありませんが、内臓の病気が原因となる腰痛もあるということを覚えておきましょう。
セカンドオピニオンを考えるとき、役に立つかもしれません。
総合的に考えよう
腰痛といっても原因は腰だけにあるとは限りません。
姿勢、日常生活、精神面など様々な原因が考えられます。
- マッサージを受ける
- 鍼灸を受ける
- 運動をする
どれも良くなるかもしれません。
しかし、どれも良くならないかもしれません。
誰かに悩みを聞いてもらって良くなる場合もあるし、仕事を辞めた途端に良くなるなんてこともあります。
残念な話ですが、すべての腰痛に対して「これをやればOK」といったものはありません。
検査をしても原因がハッキリわからず、でも不調があることを不定愁訴といいます。
非特異的腰痛も不定愁訴の一つです。
その不定愁訴を解消するためには不調がある部分だけに注目するのではなく、自分自身を総合的に見つめ直すことが大切です。
自分ひとりで抱え込まず、まずは誰かに相談してみましょう。
おわりに
最後は精神的なお話になってしまいました。
腰痛を解消するためのヒントとなる本であったりyoutubeだったり、探せばたくさんあります。
ただ、その方法が自分に合っているとは限りません。
身体を動かすことは大切ですが、それでも解消されない場合はお近くの専門家に相談してみましょう。
・安静にしても痛みがひかない
・痛みがひどくなってくる
・突然痛くなった
・足が痺れる、力が入らない
・排尿、排便障害がある
・発熱を伴う
・腹痛を伴う
このような場合、まずは病院で検査を受けてください。