今回は、鍼灸(しんきゅう)治療についてのお話です。
美容鍼(びようはり)の流行で少しは鍼灸の知名度も上がったかと思いますが、まだまだマイナーな世界です。
鍼灸というと「痛いの?」とか「熱いの?」とか「どんな効果があるの?」とか、色々と疑問があるかと思います。
そこで、鍼灸を受けたことがない方もたくさんいらっしゃいますので、少しでも「こんな感じか」とわかってもらえるよう、説明していきます。
鍼灸についてのまとめ
細かい説明は後にして、鍼灸とはこんなものだというまとめを作ってみました。
鍼灸治療は筋肉のコリを解消する以外にも、痛みを抑えたり、ツボを使って内臓を元気にしたり、自律神経を整える働きなどがあります。
では、もう少し細かく鍼灸について見ていきましょう。
鍼(はり)について
鍼灸(しんきゅう)とは鍼治療と灸治療を合わせた名称です。
まずは鍼について。
使用する鍼の実物写真も紹介しつつ、説明していきます。
鍼ってどんなものを使うの?
鍼(はり)ですからね、「注射」みたいな太い針を想像してしまいますが、そんな太くありません。
実際は髪の毛くらいか、それより細いかくらいの太さです。
鍼を製造しているメーカーは何社かありますが、今回はセイリンというメーカーの鍼をご紹介します。
これは、開封する前の写真です。
現在使用されている鍼はこのように1本ずつ個装されていて、エチレンオキサイドガスというガスでしっかりと滅菌されています。
そのため、衛生面での心配はありません。
当然ですが、1回使用した鍼は捨てます。
他の人に使用した鍼をまた使用する、なんてことはありませんのでご安心ください。
色の違いは太さの違いです。
では、開けてみましょう、ペリペリ。
写真で見ると、太さの違いがわかりませんね。
肉眼で見ても結構わかりにくいです。
これよりも細い鍼は今のところありませんが、太い鍼はあります。
鍼灸治療をする先生の考えであったり、受ける人の体質などによって太さは変えます。
ぼくの場合はこの6種類の中から選んで使用しています。
また、鍼の長さは部位によって筋肉の深さが違かったり、目標の刺す深さが違うのでそれによって使い分けられます。
たとえば、お顔の筋肉は皮筋といって皮膚のすぐ下に筋肉がついていますが、身体の筋肉は骨から骨についています。
特にお尻など脂肪の厚い部分だと短い鍼では長さが足りず、目標の筋肉まで届きません。
そういうときは長い鍼を使います。
安心の衛生面
現在使われている鍼は使い捨てとなっていて、1本ずつエチレンオキサイドガスというガスで滅菌個装されています。
昔はオートクレーブという滅菌する機械で使用済みの鍼を滅菌していましたが、衛生面から現在は個装されている鍼が主流となりました。
また、鍼を刺す前には、その刺す部位の周囲をアルコール綿花で消毒します。
しかし、この肌の消毒についてですが、1本ずつ滅菌個装された鍼を使用するので消毒をしなくてもそこからバイ菌が入るなんてことはまずありえない、という意見もあります。
皮膚の常在菌は皮膚内で増殖することができないので汚染された注射器、注射針を使用しない限り注射でバイ菌が体内に入ることはない。
とはいえ、アルコール綿花で拭いてから鍼を刺します。
使い捨て、滅菌個装、刺す部位への消毒という点から、衛生面への過度な心配はしなくても大丈夫です。
鍼は刺されると痛いのか
さて、気になるのは痛いかどうかです。
ここ、重要ですね。
鍼という名前からして痛そうな印象を持たれますが、激烈な痛みはありません。
ただし、全く無痛とまでもいきません。
人間の体には「痛点」という、痛みを感じる部分がたくさん存在します。
なので、稀にチクッとする感覚が起きる可能性があります。
しかしご安心ください、注射針のチクッよりも何倍も痛くないです。
また、筋肉に対して鍼を刺す場合、ズーンと重い感覚があるのですがコリに当たると気持ちいいものです。
鍼が初めてという方は「鍼、怖いなぁ」と、少なからず感じている方がほとんどかと思います。
でも1回鍼を刺してみると「あれ、全然平気だ」という感想が大半です。
つまり怖いのは最初だけ。
1回受けてみると「鍼は怖くないんだ」と分かってもらえるかと思います。
どうしても恐怖心が抜けない場合は無理に受けないようにしましょう。リラックスできずに疲れてしまいますし、身体に力が入ってしまい効果も薄れる可能性があります。正直に、治療院の鍼灸師に「無理です」と伝えしましょう。
ズーンとする重たい感覚
特にコリがある部分や筋肉の真ん中あたりに鍼をしたとき、ズーンと重たい感じが起こることがあります。
これを「得気」だとか「響き」なんて呼んだりします。
この響く感覚が好きな方もいれば、苦手な方もいます。
この辺りの刺激量は鍼灸師の方で調節することができるので、ちょっとズーンとする響きがキツいときは、気軽に担当の鍼灸師に伝えましょう。
また、響きがあった方が効果が高いような気がしますが、一概にそうとはいえないです。
響きが少なくても効果がある場合もあるし、しっかり響きがあったほうが効果が高い場合もあります。
これは症状によっても異なりますし、その鍼灸師の考え方にもよると思います。
とはいえ響きが苦手で我慢するくらいなら、刺激量を少なくしてもらいましょう。
リラックスできるのが一番です。
鍼灸後の身体の反応
コリ固まってしまった筋肉が緩んで柔らかくなると、血流がよくなります。
そうすると血流が改善されたおかげで治療当日は何となく重だるく感じたり、やけに眠たくなったりします。
ただし、鍼治療もマッサージと同じで強刺激により感覚が鈍くなり、より強い刺激を求める悪循環が考えられるため、強い刺激の治療は考えものです。
当店のマッサージは呼吸が楽にできる身体へと導いていきます。バキバキするような強い刺激は行わず、関節の動きや筋肉の走行、つらさの原因となる部分を考え施術をしていきます。また、痛みや痺れなどのつらい症状には鍼灸も行なっております。
心地よい範囲での鍼治療で、このような反応が起こった場合は身体が良い状態へ整っていきますので、安心して良いかと思います。
ただし、好転反応などという言葉には要注意です。
治療後の身体の変化としては、身体がポカポカ暖かくなったり受けた当日の夜はぐっすり眠れたりといった、やさしい変化が多い印象です。
出血と内出血のリスクについて
体には細かな毛細血管がたくさんあります。
痛点と同じようにすべてを避けるのは、難しいものがあります。
なので、まれに出血をしたり内出血ができるリスクはどうしても避けられません。
しかし、出血したとしてもすぐに止まりますし、傷跡も当然残りません。
内出血をしても、ぶん殴られた後のようなすごいアザにはなりませんのでご安心ください。
もしも内出血が起こってしまった場合は当日は冷やして、色が薄くなってきた次の日くらいからは逆に温めて吸収を早めてあげてください。
気になるからといって内出血した部分を揉んでしまうとアザが広がってしまうことがあるので、要注意です。
通常は数日〜10日ほどでアザは消えます。
ほとんど心配はないのですが、血液をサラサラにするお薬を飲まれている方や、血が止まりにくいなどがありましたら担当の鍼灸師にお伝えください。
また、出血や内出血があったとしても、鍼灸治療後はいつもどおり生活していただいて大丈夫です。
お風呂もいつもどおりに入ってください。
ただ、めぐりが良くなっていますので、お風呂につかる場合はふらつきやすくなる可能性があります。
水分をしっかり補給し、立ち上がるときなど転ばないように注意してくださいね。
お酒は控えめに
めぐりが良くなっている状態です。
このときにいつもと同じようにお酒を飲むと、深酔いしてしまうリスクがあります。
ぼくも昔、マッサージを受けた後に飲みに行ったらリバースした経験があります。
大量に飲んでいたわけではないのに。
鍼灸治療後もマッサージと同じようにめぐりが良くなっていますので、飲むなら普段よりセーブしましょう。
お灸(きゅう)について
お灸は鍼と違いセルフケアとしても取り入れやすいため、より身近なものかと思います。
というのも、薬局に行けばお灸を購入することができます。
商品名は「せんねん灸」です。
鍼は自分で刺すことができませんが、お灸には「台座灸」と呼ばれるシールでペタッと貼るお灸もあります。
台座灸なら簡単にお灸をすることができるので、セルフケアにはもってこいの商品です。
さて、ここからはお灸についてみていきましょう。
お灸で使う艾(モグサ)ってなに?
そもそもお灸で使用するモグサって、一体何から作られているかご存知でしょうか?
お灸は、ヨモギの葉っぱから作られています。
このちょっとゲジゲジしたのがヨモギの葉っぱです。
モグサはヨモギの葉っぱの裏側にある「うぶ毛」の部分から作られます。
その中でもモグサとして使える部分は、乾燥したヨモギの葉っぱから200分の1しか取れないそうです。
なかなか貴重なものなんですね。
モグサってどんなもの?
お灸で使用するモグサは、こんな感じです。
このモコモコしたものを小さくして、お灸をします。
モグサの作られ方
- 葉っぱを乾燥させる
- 葉っぱを砕断機でカットする
- 石臼で葉っぱをすり潰す
- ふるいにかけて異物と分ける
- 唐箕(とうみ)にかけて不純物を取り除く
参考サイト:小林老舗「もぐさの製法」
結構、手間暇かかっていたんですね。
お灸の種類
ここからは、モグサを使用してどのようにお灸をするのか、そのお灸のやり方をいくつかご紹介します。
点灸(てんきゅう)
点灸は、肌の上で直接燃やすお灸のことです。
直接燃やすといっても先ほどの写真の大きさの物を燃やすのではなく、米粒くらいか米粒の半分くらいの大きさにして燃やしていきます。
熱をしっかり通すために肌の上で焼き切ります。
ちょっとジリッと熱いですが、このようなやり方もあります。
知熱灸(ちねつきゅう)
知熱灸は点灸と違い、途中で火を消します。
つまり、燃やし切りません。
じんわりと温かくなってきたところで火を消すため、点灸よりも刺激量が少なく火傷の心配もありません。
台座灸(だいざきゅう)
自分でもできる、お手軽なお灸が台座灸です。
裏面がシールになっていて、火をつけてお好みのツボにペタッと貼るだけです。
温度、香り、スモークレスなど色々と種類があるため、自分好みの台座灸を見つけてみてください。
火の取扱には十分注意してください。また、最初は温度の低いものから試してみましょう。
お灸は結構気持ちいい
他にも棒灸、箱灸、隔物灸など色々なアイテム、やり方があります。
温度にもよりますが、基本的にはお灸は気持ちがいいものです。
肩こりや腰痛の他にも、胃の痛み、蚊に刺されたときなんかにもお灸は効果があります。
自分で行える台座灸も結構効き目がありますので、セルフケアの一環として取り入れるのもオススメです。
自分で行うときは十分に換気しましょう。煙や匂いが嫌な方はスモークレスタイプのお灸を使用すると良いかもしれません。
お灸の注意点
鍼灸の効果
鍼灸の効果について調べてみると「WHO認めた鍼灸の適応症」というものが出てきます。
これはどうやら誤りで、実際にはまだどのような症状に効果があるとハッキリはいえないようです。
しかし、実際にさまざまな症状の緩和に効果があるのも事実。
鍼灸師によっては精神疾患や不妊治療、子供への治療、皮膚疾患などを得意としている先生もいます。
鍼灸の効果については「これに効果がある」と一概にいえませんが、先生によって考え方、治療内容が違いますのでお近くの鍼灸院が何を得意としているのか、調べていただければと思います。
ちなみにぼくの場合はマッサージや食事のアドバイスも併用して行いますので、鍼灸だけを行って施術するというケースは少ないです。
痛みがある場合やコリが強い場合、不定愁訴が強い場合には鍼灸を提案することもあります。
鍼灸は気軽に受けていいのです
「鍼灸は敷居が高い」という言葉をよく耳にします。
確かに身体に鍼をしたり、火のついたモグサを乗っけたりするのですから、どんなものなのかを知らないとちょっと怖いですよね。
それになんだか治療色が強い。
よほど身体が悪くなってから受ける、といった印象でしょうか。
しかし、今まで説明してきたとおり鍼は髪の毛ほどの細さですし、お灸もセルフケアができるアイテムが薬局で買えるくらいです。
実はハードルはかなり低め。
巷であふれる怪しい施術方法よりは、解剖学や生理学など、医療系の知識をある程度の基準まで持った国家資格者が行う施術の方が安全です。
ぜひ、マッサージを受けるのと同じような感覚で鍼灸を試してみてください。