お仕事での人間関係や長時間のデスクワーク、SNSなどさまざまなストレスがかかる現代社会。
そんなストレスもあってか、なんだかやる気が出なかったり睡眠を十分に取れなかったり、心の不調を抱えている人が増えてきています。
厚生労働省による2024年度の国民健康・栄養調査では日本人成人の20.6%もの人が慢性的な不眠を抱えており、世界的にみても睡眠時間が短い傾向にあるようです。
睡眠不足はさまざまな健康上のリスクがあり、うつ病のリスクも高めてしまいます。
そんななか、不眠や抑うつといった心の不調に対し鍼治療が効果的なのではないかと注目が集まっています。
目次
鍼治療が心に与える影響について調べた研究
では、実際に鍼治療は心の不調に役立つのでしょうか?
いくつか研究報告をみていきましょう。
うつ病に対する鍼治療の研究
こちらの研究では、うつ病治療としての鍼治療の有効性と安全性について調べています。
いくつかの臨床試験をまとめ総合的に分析し、どのような傾向にあるのかを調べた信頼度の高い研究報告です。
この研究で得られたポイントは
- 鍼治療を受けた人は、抗うつ薬だけを使った人よりも症状が改善する傾向が見られた。
- 抗うつ薬と併用することでさらに効果が高まった。
- 副作用の報告は非常に少なく、安全性も高い。
上記の結果を見ても、鍼治療はうつ病治療のサポートとして有効な手段だといえます。
この研究から考えられることは、鍼治療が元気を取り戻すサポート役になる可能性を持っているということです。
また、うつ病治療の第一選択にはなりませんが、お薬だけではなかなか改善しない場合のサポートとしても役に立ちそうです。
不安症状に対する鍼治療の研究
次にご紹介するのは、不安症状に対する鍼治療の有効性について調べた研究です。
中国限定での研究にはなりますが、こちらもいくつかの臨床試験を分析した研究報告になります。
この研究でのポイントは
- 鍼治療を受けたグループは不安症状がやわらいだ。
- 6週間未満という短い治療期間で効果が出現した。
- お薬との併用も問題なく安全性が確認された。
ということで、不安症状に対しても鍼治療は有効的だと考えられますね。
対象となったのが全般性不安障害のみのため、ほかの不安障害に対しては鍼治療が有効的か、この研究報告からは不明ですが、気持ちが落ち着かないなどのお悩みに対し鍼治療によってサポートできることはあるかと思います。
うつ病をともなう不眠症に対する鍼治療の研究
最後にご紹介するのは、うつ病の人の「眠れない」というお悩みに対し、電気を流す鍼治療がどのくらい効果があるのか調べた研究です。
この研究でのポイントは
- 治療を受けた人(週3回の治療を8週間)は「眠れるようになった」と感じる人が多く、睡眠の質が大きく改善した。
- 治療が終わった後も効果が半年ほど続いた。
- うつ病や不安の症状も良くなった。
- 副作用などのトラブルはなかった。
やはりこの研究でも、心の不調に対し鍼治療は効果があったようです。
当店でご相談されるお悩み
当店が初めての人にはまずカウンセリングシートにお悩みなどをご記入いただくのですが、多くの人が「眠りが浅い」「落ち込みやすい」「頭痛」の項目にチェックをつけています。
バッチリ睡眠は取れています、という人は本当に少ないです。
今回ご紹介した研究の対象となるうつ病や不安障害といった診断までとはいかないものの、少なからず心の不調を抱えている人が多い印象です。
経験からみる鍼治療が心に与える影響
鍼治療を行なっていて、マッサージだけのときよりも鍼治療を併用したときの方が効果の持続力が違うと感じています。
実際、鍼治療をした後に「元気になった」「よく眠れるようになった」「調子がいい状態が長く続く」などのお声をよくいただきます。
個人差や症状の程度もありますが、1回だけの鍼治療でかなり改善するケースもみられます。
おそらくこれは、鍼治療が体の筋肉をゆるめるだけでなく、心の大元である脳にも良い影響を与えているからなのではないでしょうか。
施術を行う立場ですが、いまだに「鍼治療ってすごいな」と感じます。
ちょっとした不調に鍼灸という選択
まだまだ鍼灸が身近ではない現状ですが、「疲れたな」と思ったらマッサージに行くような気軽な感覚で鍼灸を受けてみてほしいものです。
治療という印象が強くハードルが高いと思われがちですが、心を癒す方法のひとつとして鍼灸はおすすめです。
世の中にはマッサージなどたくさんのリラクゼーション法がありますが、そのなかでも鍼灸はエビデンスしっかりとある数少ない方法です。
この記事を読んで「いつもはマッサージに行くけど、今日は鍼灸を受けてみようかな」と思っていただけたら幸いです。